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4.ガレラス号の真実
『船長、ガレラス号を発見しました! 船内を調べます!』
マキアンが報告するが、応答がない。建物内だから、通信が届かないのかもしれない。
「行こう」
割れたハッチの隙間から、ガレラス号の中に入った。この先は、ブリッジに続いている。
「なんか……埃っぽいね」
「うん。ヘンに甘い匂いがしないか?」
逸る気持ちと、恐怖心を天秤にかけながら、僕達は、それでも慎重に進んだ。通路の突き当たりに着いたが、最後のハッチは閉じていた。
「動力が落ちているから……無理かも」
マキアンは、軽く噎せながら首を振る。ここまで来て、僕は諦めたくない。
『船長、携帯銃を使用します!』
応答はなくとも、規定に従い通信機に向かって叫んだ。瞬間、クラリと軽い目眩に襲われ、片膝を付いた。
「エゴン! 大丈夫?!」
『――待て! 君達、そこをすぐに離れるんだ!』
マキアンの声に重なって、突然通信機から船長の声が返った。けれども、耳に水が入ったように、それらの声がぼやけて聞こえる。
『エゴン、マキアン、開けるな!! この座標は、グレイヌの宇宙センターの施設があった場所だ! 探査機がグレイヌ滅亡の記録データを発見したんだ!』
遠くで誰かが叫んでいる。
僕は携帯銃の引き金を引いた。火花が散って、ハッチが砕ける。なにかの粉がブワッと正面から吹き付けてきた。
『トトーの胞子だ! グレイヌ人も、君の父上達も、それにやられたんだ!』
ほの暗いブリッジに、虹色に輝く光の帯が幾筋も垂れている。視界の中をキラキラと、光の粒子が踊り狂う。
『10年前、グレイヌで大規模な火山の噴火が起こって、トトーの地上部分が全て燃えてしまったんだ。トトーは、地下茎に蓄えた養分で再生したが、その際、生えてきたのは胞子穂だった。放散された胞子には、生物に有害な神経毒が含まれていて――』
フカフカの床の上に突っ伏した。舞い上がった大量の胞子は、ひとしきり歓喜のダンスに興じると、再びゆっくり降りつもり……やがて屍となった僕達を取り込んで、新しい命を繋ぐのだろう。
【了】
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