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何故なら、グレイヌとの交流は現在でも続いていた。女性が生まれず、育ちにくいサルバトーレでは、10年に一度、グレイヌから家族を持つために女性がやって来る。子を成して移住する者もいれば、出産後にグレイヌに戻る者もいる。僕の母さんは、この星では長く生きられないことを覚悟した上で、僕を育てながら父さんと暮らす人生を選んだそうだ。
きっと行ける――。
そう言った父さんは、グレイヌ行きの航宙船の船長だった。何度も宇宙を往復したベテランだったのに、10年前のフライトを最後に戻って来なかった。彼を乗せたSSV-508機・ガレラス号は、「グレイヌ到着」の発信を残した切り、音信不通になった。無事に着陸できたのか否か、ガレラス号になにか起こったのか、グレイヌからの情報もない。いや、それだけではない。定期的に交信していたグレイヌからの通信は、やはり10年前に途切れたままなのだ。こちらから何度呼びかけても、応答は返らない。そもそもグレイヌとの交信は、惑星間超高速通信を使っても発信から受信まで1ヶ月かかる。痺れを切らしたサルバトーレ政府は、5年前にもベテランのタカナ船長率いる調査隊を派遣した。その航宙船ラッセン号も、「グレイヌ到着、これより着陸態勢に入る」との発信が最後になった。
新生児の誕生が止まって4年が過ぎると、人類存続の危機に追いたてられるように、政府は再度の調査隊派遣を決めた。僕は、真っ先に志願した。ガレラス号と共に父さんが行方不明になったとき、航宙士の道を選び、来る機会のために、厳しい訓練を積んできたのだ。
あれから――約2年。僕を含めた4人を乗せた最新式航宙船SSV-904機・コルドン号は、間もなくワープ航法から離脱し、グレイヌの領宙域に到着する。
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