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私はコタツの中で丸まった多良右衛門を抱き寄せ、肉球をフニフニと触ってみた。それは肉厚で逞しくカサカサゴツゴツとしていたものだった。散歩でお友達になったチワワやヨークシャテリアのような小型犬の肉球は肉が薄くカサカサツルツルとしたものだった。前者は寒さに強い犬種の肉球で、後者は寒さに弱い肉球とされている。
多良右衛門は柴犬であり、寒さには強い犬種とされている。近所で飼っている仲良しの柴犬の小百合ちゃんは雪が降り積もっても平然と外に出ており、雪の中をピョンピョンと飛び回ったりゴロゴロと転がったりと飼い主が困惑するぐらいに雪が大好きと話を聞いている。個性と言えばこれまでだが、同じ柴犬でここまで違うとはと私は困惑するばかりであった。
天気予報は珍しく当たり、この地方では雪が降りつもる毎日になってしまった。当然、多良右衛門も外に出ようとはしない。最近ではコタツの中と暖房の熱風が当たる位置を往復するだけである。温暖前線が北部で停滞を始めたのか、南岸低気圧も超過滞在気味となり、3月を過ぎても雪降る毎日は続いていた。多良右衛門も室内での運動では不足なのか、どことなくふくよかになってきた。冬毛でモフモフとしているだけかと思われたが、くびれていた腹が膨れて脂肪を摘めるようになっており、足取りもスタスタとした側対歩からノシノシとした土佐犬のような歩き方へと変わっていた。顔つきも力抜けたアザラシを思わせるものと変わり果てている。
現状の看過は許されない状況である。
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