豆の数にはご用心

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「鬼は〜外〜♡」 「福は〜内〜♡」 私の目の前にいるカップルが、お互いに豆を投げ合い始めた。 私は2つのことに驚いている。 第1に、節分の豆まきを一緒にするようなカップルがいること。 2月には、カップルに1番ふさわしいイベント、バレンタインデーがあるというのに、地味なイベントランキングベスト3に入りそうな節分をわざわざ楽しむカップルがいるとは。 まあ、そのカップルは、ただ一緒にいようとする口実を作っているだけかもしれない。 第2に、2222年になっても、節分が残っていること。科学技術は進歩し、完全にデジタル化したというのに、アナログな節分が残っているというのは面白い。豆まきもデジタル化ーーー例えば、豆まき機で豆をまくなどーーーしたらどうだろうか、と思ったが、風情がないので却下である。 カップルの家のリビングに、豆が降り積もる。どんだけ投げるんだ、と突っ込みたくなる。 「カズくんは〜内〜♡」 「マユちゃんも〜内〜♡」 こんなことを言い出した。こっちが恥ずかしくなるほどのバカップルぶり。豆をまくだけで何が楽しいんだろうと、ひねくれ者の私は思う。私が水を差すようなことではないとは思うが。 「マユちゃん、豆を食べようよ♡」 男が言う。豆まきの後の定番イベントである。年齢の数だけ食べるという。 「そうだね♡私は27個か」 すると、男が引きつった笑みを浮かべた。 「……え?マユちゃんって23歳なんじゃ……」 女の顔は血の気を失った。まるで私みたいだ。 「そ、そうよ!23よ!大人に見られたくって嘘をついたの!」 女が取り繕うが、もう遅い。男の目は、猜疑心に満ち溢れていた。 おそらく、女のほうは年齢を偽って男と付き合っていたのだろう。普段はバレないように気をつけていたと思うのだが、イベントで気が緩んでいたのだろうか。こんなことで本当の年齢がバレるとは思わなかった。思わぬ落とし穴が節分に潜んでいた。 その後、そのカップルは別れることになったらしい。 やれやれ、豆の数にはご用心である。 交際相手に年齢を誤魔化している人は、豆を食べるときには気をつけて。年齢がバレてしまうから。 ……って、そんな人はこの世の中にどれくらいいるか分からないし、カップルで節分なんてやるのは少数派だから、私が心配しなくても良いかもしれない。 そういえば、私は豆を食べられないけど、もし食べるとしたら、何個食べたら良いんだっけ? ……本当なら、今年で200個か……多いなあ。 まあ、もう死んじゃってるから、これからもずっと20個のままなんだけど。
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