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城崎のおかげで、ロッカーの整理整頓は短時間で終わった。
しかし、肝心なものを忘れていた。
「あれ、折り畳み傘は?」
「折り畳み傘? そんなもんなかったぞ」
確かに整理されたロッカーを覗いても、それらしきものは見当たらなかった。
ないはずはない。そう思って、折り畳み傘がどこに行ったのかしばらく考えたが、結局は単純な結論に至った。
そうだった。城崎はクロだった。
きっと私のロッカーから折り畳み傘を奪って、私を困らせようとしているのだ。
そう確信して、城崎に問い詰めようとしたが、もうそこに城崎はいなかった。
やられた。
どうせ、雪に降られながら傘なしで学校から帰る私の姿を見て、楽しみたいのだろう。
いいさ。傘を失った今、もう私に失うものは何もない。あんたの望み通り、降り積もった雪に足を滑らせながら帰ってやる。
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