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然は衝動的な行動を許されて安心したのだろう。六の肩に頭を乗せたまま眠ってしまった。元爾と利佳は気持ちよさそうに眠る息子の顔を見て安堵のため息をつく。
「面倒ばかりかけて申し訳ないです」
と、心底すまなそうな顔をした。
2日間を実家で過ごした然は体調も回復し、戻ってきたときと同じように夜行バスで帰ることになった。
「今回は心配かけちゃったけど、もう大丈夫だから」
もうすぐ再びの出発時間。
然より遅れて自動車免許を取った六が、バス停まで送ることになった。
「父さんが言ってたみたいに、これからどうなるかわかんないし、いつになるかもはっきりと約束できないんだけど……」
暗い車内で街灯を受けた然の顔は、すっきりとした表情をしている。
「必ず、六の隣に帰るから……待っててくれる?」
六は一瞬ぽかんとしたが、すぐにいつものへにゃっとした笑顔を見せる。
「待たないよ?」
「へ?何て言った?」
想定外の答えに、聞き間違いかと狼狽える。
「僕も一緒に歩くから。離れてても、違うことやってても気持ちは一緒だから。じっと待ったりしない。歩き方を然が教えてくれたから」
キラキラと六の瞳が光を帯びている。
吸いよせられるように唇を合わせた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。回り道しても寄り道してもいいけど、迷子にはならないで」
「うん。絶対に六のところに帰るから。……愛してる」
「僕も愛してる」
ずっと隣にいられる方法は、歩きながら一緒に探せばいい。
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