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「なんで……。僕、そんなこと然に言った覚えないけど……」
「うん、直接は聞いてない。でも一おじさんから「ここを好きにしていい」って言われたときなんか考えてただろ?はっきりと決めてなくても、やりたいことがあるみたいだったから」
「でも、何がやりたいのか、僕にもよくわからないんだよ?」
「それを、俺が一緒にカタチにしたいんだ……だめかな?」
「こんな小さなところで僕と?然はもっと頑張れる場所があるはずなのに」
「もちろん俺の仕事もきっちりやる。それとは別に、ここを俺の居場所にさせてほしいんだ。六の隣に、ずっと一緒にいられるように」
「そんなの……最初から僕の隣は然しかいないのに……」
「はいはい!そこまで!……続きは俺たちが帰ってからな。腹減ってるんだから、メシ食おうぜ」
二人の間に月尾が割ってはいる。火斗志がビールのおかわりを持ってきた。
「あ、そうだったね。いっぱい作ったから食べて」
六が繋いだ指をぱっと離して立ちあがる。然を送り出したときはウーロン茶で乾杯した。今日はビールで祝杯だ。テーブルの上のメニューも鶏の唐揚げはつくねに、エビフライはガーリックシュリンプになった。野菜もポテトサラダではなく、生野菜のスティックにアンチョビの入ったディップソースが添えられている。
「桜のお寿司も作ってみたんだ」
「旨そう……。今日は特別に気合はいってるよな」
皆の好物ばかりが並んでいる。
調理法が変わったのは「いい大人になった」ということだろう。
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