優しくて、 頭が良くて、料理上手で、美人でスタイルも良くて、運動神経抜群で……とにかく!素敵な人じゃないと兄ちゃんは認めないからな!

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「すごい……ずっと悩んでいた履修届け完成しちゃった。 一年のうちから無理にエンジン系の授業ばっかり取らなくていいってアドバイスめちゃめちゃ助かりました。俺友達少ないから全然情報なくて」  そう言って理央が千聖を見上げた。 「うん。基礎しっかりやっておいて二年で取るのがお勧め。それにしても意外だよね。友達いーっぱい居そうな見た目してるのに」  そう言って千聖はもう一度理央の頭を優しく撫でて、また先程までみたいに理央の髪に指を絡めだした。  優しく懇切丁寧に理央に説明してくれた千聖の姿から、怖くない優しい人なんだということがわかって、ドキドキするものの、撫でられたり髪に触れられたりするのがだんだんと心地よくなってきて、うっとりとしてしまう。飼い主に撫でられて気持ち良さそうにしてる猫の気持ちがよくわかってしまった。 「俺が大学の皆に馬鹿にされたらいけないって心配した兄が整えてくれた見掛けだけなんです。カッコ悪いですよね。全然遊び慣れてなんかないし」  撫でられて恍惚としながら、この人はありのままのカッコ悪い理央の姿を見ても馬鹿にしないだろうなと思って口にした。 「カッコ悪くなんかないよ。 むしろ……何て言うか……」  淀みなく綺麗に話す千聖らしくなく少し言い淀んだ彼を見ると、  「うわっ……」 「こんなに派手な見た目なのに、中身は綺麗好きで真面目で清純派だなんて、反則やろ……ギャップ萌えでおかしくなりそうや……」  ぐいっと抱き寄せられて耳の奥にどろっと流し込まれたセリフが理解できなくて理央は目を白黒させてしまう。 「え……千聖さん……?……関西弁?」 「気にすんのそこなん? りお」  くすくす笑った彼の吐息が熱い。耳が溶けちゃいそうになって慌てて耳を抑える。多分顔も真っ赤で理央は千聖が見れない。 「あ……っだって……っ」 「関西出身なんだ。興奮するとつい戻っちゃう」  いたずらっぽく笑って、耳を抑える理央の手をそっと外させて、長い指先が耳朶に触れる。 「あ……っ」  理央があえかな声を漏らしたときだった。  理央のスマホが小さく震えてメッセージが届いたことを知らせた。 「あの……っライン来たみたいでっ……ちょっと見ても… 「うん。もちろん」  千聖に許可を取って、ドキドキと高鳴る胸の音を誤魔化すようにスマホを手に取る。 「……っやば……!」 「どうかした?」  慌てた理央の様子に千聖が優しく尋ねる。 「お兄ちゃ……あ、いや……っあの兄から何時だと思ってるんだって……」 「あぁ、ほんとだ。もう十二時超えちゃってたね。理央、終電大丈夫?」 「あ!そうか、終電……!終電気にしないといけなかったんだ……!」  夜遊びなんてしたことなかったから、終電を気にしたことなどなかったのだ。 「理央、最寄り駅どこ?」 「最寄り駅は経堂です」  困った顔で千聖を見上げる理央。 「あー、僕も小田急だからわかるんだけど12時43分終電だからもう間に合わないね」 「うそ……歩いて帰るしか……」   絶望した顔の理央に 「僕も小田急だから終電ないけど、タクシーで全然帰れる距離なんだよね。だから今日僕の家に泊まってもいいよ? 経堂まで歩くの大変でしょ? 道わかる?」 と千聖は提案した。 「え……でも迷惑じゃ」 「独り暮らしだから全然大丈夫。あんまり広くないけどそれでよければ。もし嫌なら朝までこの店は営業してるからここで二人でオールしてもいいけど、うちに泊まって明日の練習一緒に行けば良くない? 服とかラケットとかは貸してあげるよ」  こんな夜中によくわからない東京の道を歩いて帰ることを考えるとぞっとする。明日は練習だと言っている朝までここに引き留めるなら彼がいいと言ってくれているわけだし、変に遠慮しないで泊めてもらうのが一番の得策に思える。 「ありがとうございます。お願いしてもいいですか」  理央が頭を下げると 「もちろん。そうと決まったらウチに帰ろうか」 千聖はそう言って、理央の手を取って立ち上がった。
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