優しくて知的な彼氏とサークルの合宿中我慢できなくて車でこっそりしたら、優しい彼氏が野獣になってしまった話

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 海岸の片付けが終わり、理央が最後のゴミ袋を決められた場所に持って行くと、もうサークルのメンバーは殆んど大学のクラブハウス横に建てられた宿舎の方に戻ってしまったようで、人の気配は殆んど無くなっていた。  宿舎に戻ったら、部屋は学年毎に分かれて割り振られているし、今夜はもう千聖に会えることはないのだろう。帰りは千聖の車に乗ることが決まっているけれど、他にも千聖の車に乗るメンバーもいるし、帰ったらまたしばらく理央も千聖もアルバイトが忙しい。  九月の旅行の約束まで何週間もあると思うと先ほど触れ合った唇が寂しく疼いた。  合宿最終日の今夜は、おそらく学年毎に部屋に集まって遅くまで飲んで雑魚寝だろう。千聖は人気者だから、三年生の皆に囲まれて楽しく最後の夜を過ごすのだろう。もしかしたら噂になっている三年生のあの人に告白されたりするかもしれない。千聖を信じていないわけではないけれど、どうしたって胸は痛む。  のろのろと下を向いて宿舎までの道程を歩いていると。 「理央!」  呼び掛けられて驚き顔を上げると、そこに千聖がいた。 「え……っ千聖さん……?」 「車にバーベキューで使った荷物積まなきゃなんなくてさ。戻ってすれ違ったら嫌だからここで待ってた。理央、また最後まで真面目に片付けてたんだろ?」  千聖がふわりと優しく笑って理央の綺麗な色の髪の毛をかき混ぜた。千聖の額にも汗が滲んでいる。理央とすれ違わないように急いでここまで来てくれたのかもしれない。 「……ごみ捨て行ったら遅くなっちゃっただけです……」  びっくりして、嬉しくて、心臓がぱんって割れたらどうしようと思いながら理央は何とか言葉を紡いだ。 「宿舎までだからちょっとだけど……デートしよ」  そう言ってそっと手を繋がれた。  もうサークルの皆は宿舎に戻っているだろうし、元々此処は田舎なので合宿で来る学生が居なければ閑散としているところでもある。そのため周囲に人の気配はない。  繋がった掌が熱くて、熱くて、話したいことはあるのに言葉がうまく出てこなくなった理央に優しい声で、眠る前のこどもに語りかけるみたいなトーンで話してくれる。来月の旅行たのしみだねって。  以前その旅行もどこがいい?と聞かれたときも「どこでもいいです」なんてつまらない返事しか出来ない理央に優しく「海がいい? 買い物はしたい? 乗馬は興味ある?」と色んな条件を出して選びやすくしてくれた。曖昧な返事ばかりの理央に眉をしかめたりしない。根気よく、ゆっくりと理央のしたいことを探してくれた。  どんなときでも、すぐ答えを出せない理央に優しく付き合ってくれる、そんなひと。  あぁ、もうすぐ宿舎に着いてしまう。まだ手を離したくない。旅行は楽しみだけど、そんなに先まで我慢しないといけないと思うと泣きたくなる。優しいグリーンノートが潮風に乗って理央の鼻をくすぐるから、余計に胸が切なくなって、この手を離したくないのに、宿舎の灯りはあっという間に目の前だ。  さっき感じたあの燃えるような熱はすっかり落ち着いてしまったのか涼し気な千聖の顔にその名残を探してつい見つめてしまう。  おやすみなさいって言って一年の部屋に向かわないと、きっと優しい千聖を困らせてしまう。  でも、どうしてもおやすみなさいが言えなくて。はく、と喉がひくついたそのとき。 「……コンビニで買い物したいものがあるんだけど……ちょっとだけドライブ付き合ってくれる?」  千聖がうんと優しく笑って、繋いだ理央の手をぐっ、と引き寄せた。
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