修道女

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「いただいてもいいかしら。」 普段使わない女性らしい口調で、まだ湯気が立つナポリタンを食べようとしている。 「いただきます。」 わたしはシスターだが、修道服は着ておらず、生成りのワンピース姿だった。 黒く長い髪を後ろでひとつに纏めている。 「ワンピースにケチャップがはねないように気をつけて。」 勇は前世でも優しい男性だ。 「勇さんも、カレーがはねないようにね。」 白い半袖のワイシャツ姿の勇。 わたし達、勇とはなは楽しく食事をしている。 恋愛はタブーとされ、生涯結婚をすることは許されないはずのわたしは、密かに勇と恋愛をし将来を約束している。 ふたりの未来を想像しながらも、わたしはまだ迷っていた。 「シスターを辞めて修道院を出ていけば、結婚も赤ちゃんを産むことも自由に出来るのよね‥」 「うん。でもはなさんは‥」 勇が俯き、スプーンを置いた。 「はなさんはマザーになるべく人だから簡単には出られない。だから‥」 「わたしはマザーより、あなたと一緒にいたい。でも、イエス様に背くのは‥どうしたらいいかわからないのよ。」 マザーとは、所謂呼称で、わかりやすくいえば修道院の院長とでもいうのだろうか。 わたし達はどうやら「駆け落ち」を計画しているようだ。 今世のわたしからしたら、いやいや、そりゃ無理だろーと思ってしまうが、前世のふたりは至って真剣だ。 「逃げよう?僕は絶対に君を守るから。」
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