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彼がトイレから戻る前に、店員の女性が笑顔でやって来た。
「お待たせ致しましたー。」
透き通った綺麗な紫色のレモネードがふたつ。
ハンドメイド風のコースターに置かれたレモネード。
「あのー、写真ってインスタに載せても大丈夫ですか?」
女性に尋ねると、優しい笑顔で
「大丈夫ですよ。他のお客様が写らなければ。」
わたしは他の客がいつの間にか違う人になっていることを聞きたい衝動に駆られたが、初めてお邪魔した店でそんなことを聞くものではないな、と言葉を飲み込んだ。
「お食事もすぐお持ちしますね。」
そう言って、女性はカウンターの方へと移動した。
綺麗な紫色のレモネードを庭園をバックに撮影していると、トイレから彼が戻ってきた。
「羽美ちゃん‥大変だよ。」
心なしか顔色が悪い。
わたしはお腹でも下したのかと思い、「大丈夫?薬あるよ?」と言ってみたが、彼は黙って席に着き、辺りを気にしながらこう言った。
「向こうにいたカップル、お爺さんと子供に変わってるんだよ‥」
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