サクラ咲け、未来咲け

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 ちょっと心配になって参考書を閉じた。鞄の中に必要なものが入っているか見る。特に受験票を忘れたとなると、死亡確定と言って良いだろう。うん、大丈夫。ちゃんと受験票が綺麗にクリアファイルに仕舞われていた。筆記用具もあるし、お弁当もある。他にも諸々全部揃っていた。それを確認して、俺はホッと息を吐く。そしてまた参考書を開いた。  それと同時にアナウンスが鳴る。聞きなれたそのアナウンスに、誰もが少し顔を上げた。それから黄色い線の後ろに近づく。ベンチに座っていた奴らも皆立ち上がって、列に並んだ。  やって来た銀色の車体に明るい緑色(詳しい色の名前は分からない)を塗装した南北線が柔らかい顔を覗かせる。徐々にスピードを落とし、俺が立っていた位置とは少しズレた場所で止まった。扉が開くと、下車する人が全員いなくなった所で乗車する。幸運にも席は空いていて、心の中でラッキーと呟いた。
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