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春から東大、なんて洒落たことが言えるかどうかはこの受験に全てが掛かっている。これでずっと夢見ていた東京大学に進学できるかできないかが決まるのだ。一応、滑り止めで受けた私立は皆受かっている。だがしかし、一番は東大。東大に何としてでも行きたい。駒場祭に行った際に心を奪われた、あの教授の元で授業を受けたいのだ。
俺は凝った首を解すように首を回すと、ふーっと息を吐いた。電車が発車する。徐々にスピードを上げ、揺れが少し強くなった。
参考書を凝視しながら、復習する。大丈夫、普段通り行けば受かる。東大の模試でもA判定とまでは行かなくても、B判定を何度も出したじゃないか。大丈夫、自分を信じて。
溜池山王。永田町。四ッ谷。市ヶ谷。飯田橋。後楽園。ここまで来ると、スーツを着た人たちがかなり減って、俺と同じ制服を着た受験生が目に留まるようになった。この車両だけでこれだけの人数が東大を受けるかもしれない。そう思うと気が気ではないが、でもそんなことで俺の心はへし折られることは無かった。
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