頭語

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「はい負けー」  どす、と頭に肘が落ちる。 「弱いな、小塚(こづか)」 「うるさい」 「ということで」  ノートから破ったページを突き出された。 「罰ゲーム決定。ラブレター書いて相手に渡す!」  僕は頭に乗っかった肘をどかして仕方なく机に向かった。  でも僕には好きな人なんていないし、いたこともない。  誰に書く?  ちらっと通学鞄を見て、ひらめいた。 「……こんな名前の子学校にいないだろ」 「夕霧アイ先生。この本の作者」  僕は鞄から薄紫の表紙の単行本を出した。「文月の頃〜恋綴り〜」。大好きな小説家の新刊。 「それじゃファンレターじゃん」 「あなたが好きって書いてる」  証拠を突きつけると、悪友たちは興味なくしたのか場を去った。  僕は書き始めた手紙を見た。  罰ゲームはなしになった感じだけど。  せっかくだし、感想と気持ちくらい送っても。  僕は自分のノートを切り取って、もう一回書き始めた。
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