母の想い

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母の想い

光が、施設に少しずつ慣れていく間、由香は、光が部屋を空けている時、清掃員の代わりに掃除をしたり、部屋で一人で食事がしたいと言う時は、給食ではなく、由香が光に昔作っていた料理を『給食』と光には伝えて、食べさせたりしていた。 昔食べていた食事だったからか、光は、実際の給食より食べられるようで、体調も怪我も徐々に回復していった。 由香は、自分の仕事と光の事で、忙しい日々を過ごしていたが、とても幸せな時間だった。 『光が近くにいる』 『光の部屋の掃除をしてあげられる』 『光に手料理を食べてもらえる』 今まで望んでも叶わなかった夢が叶ってすごく幸せだと感じる反面、その幸せが光の辛さから生まれたものだとも分かっていたため、もどかしい思いにも駆られていた。 『光に幸せになってもらいたいのに…』 自分がしてあげられる事の限界を感じながらも、遠くからでも分かる、時折見せる微笑む 顔を見て、心が温かくなってしまっていた。 光は、他の人とも少しずつ関わりを持てるようになり、施設の中の清掃や介護補助の手伝いなどを行い始めると、少しずつ明るい雰囲気になっていった。 ただ、一人になると、携帯電話を見つめては悲しげな顔になっていた。 誰かが画面を覗いたら、かわいい女の子の寝顔だったと言っていた。 皆が、思った。 「助けたという女の子なんだろう…」 と。 そして…、光がこの施設へ来て、1年が経とうとしていた。
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