旅立ちの日

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旅立ちの日

「お世話になりました」 施設長室で、光は篤史に頭を下げた。 小林という男が現れてから2年が過ぎ、この施設を光が出ることを決めた。 大切な人の元へ戻るために… 従業員に見守られながら門を出る光。 その姿を、泣きながら由香は給食管理棟の陰から見ていた。 その夜、篤史が由香を呼び出した。 「…大丈夫ですか?」 そう篤史が問いかけると、 「寂しいです…、でもあの子が幸せになれるのなら…私は嬉しい…」 そう泣き出す由香を、篤史は優しく抱きしめた。 『ゆっくり…僕達も前に進もう…』 篤史は、由香に言い出せない気持ちを心の中で呟きながら、由香に寄り添っていた。
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