光が導いてくれた先に…

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光が導いてくれた先に…

その夜、篤史と由香は給食管理棟の裏にあるベンチで並んで座っていた。 「明日から、また忙しくなりますね」 由香は、微笑みながら篤史に伝えると、 「まだ作業してる人もいて、明日心配だよ」 と、篤史は苦笑いで答えた。 「…ありがとうございました、勇気のこと…」 そう由香が伝えると、 「悔しいことに、僕は知らなかったんだ…」 と、うつむき加減で篤史が答えた。 「僕はただ、光君が会いに来てくれるだけだと思ってたから、なんか少しだけ寂しかったよ」 そう言って笑う篤史の横顔を、由香はじっと見つめた。 そして、 「篤史さん…」 「今日からもう一度私とお付き合いしてくれませんか?」 と、篤史に問いかけた。 無言のまま、篤史が由香に視線を向けた。 「…いいんですか?」 不安そうに問いかける篤史に、由香は笑顔で、 「勇気と約束しましたから」 「…幸せになるって」 と伝えると、少し恥ずかしそうに下を向いた。 そんな由香を、篤史は優しく抱きしめた。 篤史に抱きしめられながら、これまでの出来事が走馬灯のように頭に浮かんできた。 篤史が勇気をこの施設へ連れてきてくれなかったら、こんな形でやり直せなかった… 由香は、篤史の存在がとても大きく感じた。 そして、これからの道のりは、篤史と勇気とそして周りの人達と、共に幸せだと言い合える時間を大切にしていこう…と、心に誓いながら、由香は篤史の胸の中に顔を埋めた。 外では、忙しく準備をする人達の声がかすかに聞こえていた。 …END
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