絶たれた夢

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絶たれた夢

「…お久し振りです」 食事処の個室で、久しぶりに顔を合わせた元夫の両親。 元夫とは全く似ていない穏やかな二人に久しぶりに会えた事で、勇気を一目見られると思うと胸が高鳴り、そんな気持ちを落ち着かせようと、由香は呼吸を整えていた。 そんな由香の、勇気への想いが溢れている姿に、元夫の両親は困った顔をしていた。 「由香さん…」 言いづらそうに、元夫の母が呼びかけた。 そして、 「実は…、ユウキ…養子に出してしまったんだよ…」 と、言いづらそうに伝えた。 由香は、 「え?」 と、声に出した後、言葉を失っていた。 養子なんて話、今まで一度も出なかった。 私が迎えに行くのを待っていてくれてると思っていた。 なのに… 「なぜですか?」 「私が迎えに行くのを…何で待ってくれなかったんですか!」 由香は、泣きながら元夫の母を問い詰めた。 「ユウキが限界だったんじゃ…」 元夫の父が呟いた。 由香と目があった元夫の父は、 「ユウキは何年も声を出せなくなっていた。」 「どんなに殴られても、痛みすら感じない子になってしまっていた…」 「…壊れてしまったんだよ…」 そう言って涙を流した。 勇気が声が出せなくなったことを、元夫の両親は、ずっと言えなかった。 息子の暴挙からやっと逃げれたお嫁さんの由香が、責任を感じてしまうことが申し訳無かった。 初めて知る現実に、そして、元夫の父の涙を見て、由香は自分自身が情けなく思った。 「…私のせいですね…」 「私がもっと早くに連れ出して…」 「違う…私が最初に連れて逃げればよかったんだわ!」 そう呟いた後、由香は嗚咽を漏らし、あふれる涙が止まらなかった。 しばらくして… 「養子先は、どんな方なんですか?」 と、由香は元夫の両親に尋ねた。 「良い方だよ」 「会話も出来ず、ろくに中学も通えなかったあの子が、高校に行くかもしれないと、この前教えてくれたよ」 そう元夫の両親は優しくほほえみながら、由佳に伝えた。 由香は、諦めきれない思いを心にしまい、遠くからでいいから見たいと元夫の両親に頼み込んだ。
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