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『悲劇商店』と書かれた古い看板の店には今日も誰かの悲鳴が響いている。
「あなたは明日足をくじきます」
「明日は彼女と一緒に出掛ける予定なんだ!どうにかしてくれ」
『悲劇商店』の店員であるミラうんざりしながらも「店長~」と部屋の奥にいる彼を呼んでやる。その拍子にお守りである紫の石のネックレスが揺れた。
「このお客さん、取引がしたいんだって」
しばらくして不機嫌そうな顔をした若い男が店の奥からやってきた。寝ぐせの目立つウルフカットのブロンドヘアに切れ長の垂れ目。彼がミラの上司で『悲劇商店』の店長であるローガン・ヴァイトだ。
けだるげにあくびをしながらどっかりとカウンターの前の椅子に腰かけ、彼は口の端をあげる。
「あんたは俺に何をくれるのかい?」
「え……」と依頼主の青年は言葉につまった。きっと取引のルールをよく理解していないのだろう。
案の定、ローガンは3分ほどたったところでカウンターの脇にかけてあったベルを鳴らした。
「取引は終わり、明日はおとなしく足をくじきな」
彼の鳴らしたベルの音が消えると青年はふらふらとおぼつかない足取りで店を出ていった。
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