莞太朗と悌三

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 不意に息を詰めたかと思うと悌三は硬直して身体を震わせた。莞太朗も激痛に息が詰まった。  そして悌三の力が抜けて、口を半開きに放心するのを見た瞬間、これまでに感じたことのないくらいの快感が走った。  息が整うまでの束の間、悌三の背中を抱いた。  悌三は全身の力を抜いたままで、何も言わない。  後悔しているのだろうか。  莞太朗が後始末するのもなすがままだった。  服を着ながら、悌三にも着るよう声をかけた。 「最終バスで帰るんだろ? すぐ風呂沸かしてくるよ」  部屋を出ようとした莞太朗はズボンの裾を掴まれて驚いた。  振り向くと身体を起こした悌三が首を傾げていた。 「した、んだから一緒に住むんだろ?」 「え??」 「帰るとこ、ないし…」 「本気? 毎日する覚悟あるの?」 「…毎日する?」 「いや、俺の体力が持たねえ」  莞太朗は混乱して強張った笑みで言った。 「そっか」  悌三はまた首を傾げ、何か言葉を探すように口を半開きのまま莞太朗をじっと見た。 「…もう一回、しない?」 「今?」  頷く悌三をみて、莞太朗は笑うしかなかった。  抱きしめて布団に転がるとキスした。   しばらく貪り合って、それから悌三の顔を見つめた。  無表情だが、息が上がって顔が赤い。  何を思っているかはわからないが、無性に嬉しかった。 「明日の朝、しようぜ」  本当の恋人になったみたいだと思った。  これが、女の子たちが勘違いする理由なんだろうか。  気持ちを引き締めるように顔を引き締めた。  すると悌三も鏡のように唇を引き締めた。それから莞太朗の頬に両手を添えて、軽くキスをした。 「僕、毎日でも良いよ」  無表情。しかし真面目な顔。 「本気?」 「うん」  大学を辞めた理由。多忙に流されたくないと思って莞太朗のもとにやってきた理由。  この男はもしかして莞太朗の気持ちにとうに気付いていたのではないだろうかという気がしてきた。 「まあいいか…」  無口な男の本心をゆっくり聞き出す時間がある。 「え、本当に毎日?」  無表情な顔では焦っているのかはわからないが、声は少し怯えているようだ。 「一緒に暮らす条件は、セックスじゃない。いや、するけどさ、お前といたら絶対したくなるから。でも、お互いしたい時にな。一方だけがしたいってのはなしだ」 「莞太朗がしたいときならいつでもいいよ」  肩を竦める仕草は照れている時だ。  莞太朗は微笑んで、悌三の頭を撫でた。  「条件はバイトでいいから仕事して、自分の食費は自分で賄ってくれよ」  悌三は頷いて、もう一度自ら莞太朗にキスをした。 完
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