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「気いつけてね」
ニヤッと笑う。片頬を引き攣らせるような、どこかだらしのない笑い方だった。
「あの」
「茉莉、早く」
奈津子に手を引かれ、夜の街を足早に抜けながら、茉莉は言った。
「奈津子さん、あのおじさん、私の隣の部屋の人」
「えっ、マジか。大物じゃん」
「大物なんですかね?」
茉莉の胸の鼓動の高鳴りはなかなか収まらなかったが、奈津子に引き摺られているからだけではない気がする。
ビトーさんの不器用な笑い方が脳裏に焼き付いて、離れなかった。
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