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3.未知との遭遇
それから茉莉は、右隣の部屋の住人、ビトーさんを観察することがやめられなくなった。
ビトーってどういう意味かな、と思ったけれど、普通に尾藤という苗字だった。
尾藤崇太郎。ヤクザ映画に出てきそうな名前だ。
何で名前を知ったかというと、お隣の205号室の集合ポストから、何かのダイレクトメールがはみ出していたのを見たからだ。
決して、漁ってはいない。はみ出してた。かなり無理のある角度で顔を封筒に近付けたけど、触ってないからセーフ。
尾藤は、朝は大体八時過ぎに家を出る。
夜は遅い。深夜近くに戻ってくる。
帰らない日も、割とある。そういう時は翌日のお昼頃に帰ってくるみたいだ。愛人のところにでも行っているのかもしれないが、その割には無精髭が伸びてげそっとしている。頑張り過ぎ?
土日平日も大して関係ないようだ。いつ休んでいるのか、よく分からない。ヤクザの人には休みがないのかな?
茉莉が隣の出入りの気配に耳をそばだてて得た釣果は、以上である。これだけのことを掴むのに、だいぶかかった。
茉莉の仕事は週休二日のシフト制で、土日は大体仕事だし、早番の日も遅番の日もあって、不規則だ。築浅のアパートなので、特別壁が薄いということもないし、なかなか情報の入手が難しい。
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