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「ごきげんようですって。面白くないですか?」
翌日のアンで、茉莉は奈津子に言った。
二人は作業台に並んで、注文のフラワーアレンジメントをせっせと量産している。
「面白くないわよ。茉莉、あんた何ヤクザのストーカーしてんの」
茉莉の報告を受けた奈津子は、呆れ顔だ。
「ストーカーじゃないですよ。本物のヤクザさんを見たのは初めてだから、気になっちゃって」
「ヤクザさんて。関わり合いになっちゃいけないって言ったでしょうが。売っ飛ばされるよ」
「そんな悪い人には見えませんでしたよ」
茉莉はオレンジのカーネーションを、スポンジにポスポス刺した。この感触が好きだ。
「大体ああいうヤクザはさ、堅気と関わり合いになっちゃいけないって思ってると思うよ」
奈津子はもっともらしく言う。
「それはそうかも。そういう感じでした。プロですね!」
「何感心してんのよ」
「あまり話し掛けちゃ、迷惑ですかね?」
「やめときなさい!」
奈津子がピシャッと言った。俄然興味が湧いちゃったっていうのに。
「まさかと思うけど、好きになったんじゃあるまいね?」
「それはナイです」
茉莉が即答すると、奈津子が胸を撫で下ろした。
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