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気持ち良さそうに話していた横田が、急に、はっ、と目を見開いた。隣の男性の肩を小突くと、全員店の入口の方を見て、ピタリと話をやめた。
「え?」
茉莉は男性陣の目線を追う。
店に、二人連れの男が入ってきたところだった。
目のギョロリとした年配の男が先を歩き、その後に付いてきたのは、尾藤だった。
あ、と思わず茉莉は声を漏らす。
尾藤もこちらの席に目を留めた。
「お、うちの若いのじゃねーか」
それが合図かのように、男性陣は全員同時にバッとその場に立ち上がって頭を下げた。
「お疲れーっす!!」
「お疲れさん」
「しゃーっす!」
「あんま羽目外すなよ」
「しゃーっす!」
年配の男と尾藤は離れたテーブル席に案内され、茉莉達のいる小上がりからは見えなくなった。
男性陣は腰を下ろし、さっきまでの勢いはどこへやら、塩を振りかけた白菜みたいにシオシオになっている。
「ごめんねー……。あれ、上司……。合コンの店かぶるとか最悪だよ……」
「上下関係やっぱ厳しいんだねー」
「……え、あれ、尾藤さん?」
奈津子が、恐る恐る、といった表情で茉莉に囁く。
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