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茉莉が口を開く前に横田が叫んだ。
「えっ、君達、ビトーさん知ってんの!」
「こないだ桜片町で見たよ。ヤクザじゃないの?」
奈津子の言葉に、横田は吹き出した。
「見た目ヤクザっぽいけど、あの人は刑事だよ。俺のペア長」
「刑事とヤクザって区別つかないって本当だったんだ」
「舐められちゃ終わりの商売なんでね。まあ今の若い刑事はだいぶソフトになって来てると思うけど、あの人は最期の世代なのかなあ」
尾藤に聞こえる距離ではないが、声を落とす。
「桜丘署刑事課、泣く子も黙る鬼のビトー」
「山のフドウみたい! ダサっ」
菜津子が呟いたが、茉莉は感動に打ち震えた。
尾藤さんは刑事さんだった! 素晴らしい。
こんな重大情報が手に入ったなんて、今日の合コンは大成功!
「めっちゃカッコいいじゃないですか……」
「え、あ、そうお?」
褒められていない横田が照れたようにヘラヘラ笑う。
「尾藤さんはどんな人ですか?」
茉莉が前のめりになり過ぎて、横田は少し仰け反った。菜津子が茉莉の肩をひき戻す。
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