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「落ち着きなさい、茉莉。ごめんね、この子、尾藤さんの隣の部屋に住んでて。最近何かと気にしてんのよ」
「えーっ、お隣さんなの。世間狭すぎ!」
横田は感心したように腕を組んだ。
「尾藤さんはね、良い人よ」
「やっぱり!」
「ま、怖いけどね」
「どう怖いんですか?」
うーん、と唸りながら、横田は枝豆を口に放り込んだ。
「ああ見えて、無闇に怒鳴ったり殴ったりしないんだよね。安い挑発に乗らない。淡々としてて、それが怖いの。アタマも回るから、強行犯から知能犯まで対応できるし」
「インテリジェンス!」
「あ、や、ふつうに下品だけどね」
「下品なんですか」
まあ、上品な感じにも見えないけれど。
横田はヒラヒラ手を振る。
「てか、90%の刑事は下品だから。学もねえし」
「右京さんみたいなジェントル刑事いないんですか」
茉莉はひそかに水谷豊のファンだ。
「いないいない。あ、警視庁とかにはいるのかな……。まあこんな地方署からしたら雲の上の話よ」
「そうなんですね」
よく分からないが、尾藤さんは下品らしい。心のメモに書く。
にしてもさ、と呟いた横田はしみじみ腕を組んだ。
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