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「いいなあビトーさん、俺ら若手はみんな寮だからさ、普通のアパート暮らしとか憧れるんだよね。こんな可愛い女の子が隣に住んでんだ、最高じゃん……」
「あ、でも私、嫌がられてるっぽいです」
茉莉が尾藤の塩対応を思い出して言うと、横田は首をひねった。
「んなことないと思うよ。今思い出したけど、『隣のおねーちゃん、めっちゃいい匂いして、すれ違うだけで癒やされる』とか言ってたの、あれ茉莉ちゃんのことじゃないかな」
「それは確かに下品ね」
菜津子が憮然とし、横田はハッと口を押さえた。
「ごめん! キモいよね、おっさんに嗅がれてたなんて! 許して、通報しないで!」
「え、キモくないですよ。大丈夫です」
茉莉は顔の前で手を振った。
そんなこと思われてたのか、なんか照れる。香水なんか付けていないけど、職場の花の匂いが染み付いてるんだろうか。ラッキー。
茉莉は顔がニヤつかないように頑張って口角を保った。
「そう? ごめんね、なんせ俺も下品な刑事だもんで……無神経ってよく言われんだよ。気に障ること言ったらすぐ教えてね」
横田はしょんぼりして言った。見た目ほど軽薄ではないらしい。
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