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「あの、尾藤さんの好きな食べ物は何ですか?」
何か他にも情報を仕入れなければ。
焦った茉莉がどうでも良いことを聞くと、横田は真面目に考えた。
「パピコかな? よく半分くれる」
「ひゃーっ! パピコーっ!」
「落ち着きなさいよ、茉莉」
不意に、横田がジーンズのポケットを押さえた。顔色が青くなる。
「ごめん、電話……」
席を外すと、ややして能面のような無表情で戻って来た。
「呼び出し……。ごめん、お先するね」
「えーっ、ほんと忙しいんだねえ」
茉莉は、彼がノンアルコールビールしか飲んでいないことに気が付いた。車で来たのかと思っていたが、呼び出しに備えていたのか。
お金をおいた横田がトボトボ出口に向かうと、尾藤も席を立ったところだった。一緒に呼び出しらしい。慰めるように横田の肩を抱く。
「お前いーよ、俺行くし」
「いやいや、ペア長だけ行かせるわけにはいかないっす……」
尾藤さん、アニキ肌。
茉莉は刑事の背中に熱っぽい視線を注いだが、店を出ていく尾藤が振り返ることはなかった。
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