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やっぱりこいつは頭のネジが飛んでる。外面だけいいストーカー気質のサイコパス野郎。まともに取り合うだけ損をする。どう対処するのがベストか。
「あなたは意外とまともな刑事さんだそうですね。調べました」
いつきは尾藤に笑いかけた。
「正義感も倫理観も、ちゃんとしてる。犯罪者には厳しいけど、そうじゃなければ何もできない。僕は犯罪を犯しませんよ。前会ったときは不退去罪だなんだって揚げ足取られましたけど、もう同じ轍は踏みません。僕もあなたが守るべき小市民の一人ですから、お忘れ無く」
それを聞いて、尾藤は思わず笑ってしまった。
自分は随分舐められているらしい。こんなに年下の世間知らずの坊ちゃんに。
今まで向き合ってきた頭のおかしい犯罪者たちを思えば、こんな奴、なんてこたない。
「俺のこと、ろくに調べてねえんだなあ」
「え?」
「お前みたいな奴は録音してんだよな。出せよ」
手のひらを向けると、いつきは目を瞬いたが、ややして小さなレコーダーをテーブルに置いた。スイッチを切る。店内には防犯カメラはない。席は死角。
尾藤はふっと手を伸ばして、いつきの胸倉を掴んだ。顔が近づく。
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