30.(尾藤)花屋と刑事の一年後

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「申し訳ないならどうする。どう責任を取る?」  答えに詰まる。何の責任も取れない。  大平は尾藤をじっと見て聞いた。 「君は娘に何ができる?」  何なんだ、一体。尾藤は口の中で呟いた。  一年も前に、きれいに別れた女なのに。誰も彼も、好き勝手蒸し返しやがる。どういうつもりだ。  そう思いながら、分かってもいる。  結局茉莉は尾藤にとって何も過去になっていないのだ。忘れられないし、忘れたこともない。それが未練だと言われたらそうなんだろう。自分から別れておきながら、未練タラタラだ。  尾藤は小さく息をついた。  しょうがない。オッサンなんてそんなもんだ。 「彼女が本当に困ったときは、どんな手段を使ってでも助けます」  自分は何を言ってるんだろう、と思う。大平は鋭い目で尾藤の顔を見ている。 「どんな手段を使ってでも? 君は警察官だろう。そんなこと言って良いのか?」 「いいです」  茉莉には幸せになって欲しい。  そのためなら何をしても、仕事を投げ出しても、なんなら自分は死んでも、別に構わない。
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