619人が本棚に入れています
本棚に追加
「申し訳ないならどうする。どう責任を取る?」
答えに詰まる。何の責任も取れない。
大平は尾藤をじっと見て聞いた。
「君は娘に何ができる?」
何なんだ、一体。尾藤は口の中で呟いた。
一年も前に、きれいに別れた女なのに。誰も彼も、好き勝手蒸し返しやがる。どういうつもりだ。
そう思いながら、分かってもいる。
結局茉莉は尾藤にとって何も過去になっていないのだ。忘れられないし、忘れたこともない。それが未練だと言われたらそうなんだろう。自分から別れておきながら、未練タラタラだ。
尾藤は小さく息をついた。
しょうがない。オッサンなんてそんなもんだ。
「彼女が本当に困ったときは、どんな手段を使ってでも助けます」
自分は何を言ってるんだろう、と思う。大平は鋭い目で尾藤の顔を見ている。
「どんな手段を使ってでも? 君は警察官だろう。そんなこと言って良いのか?」
「いいです」
茉莉には幸せになって欲しい。
そのためなら何をしても、仕事を投げ出しても、なんなら自分は死んでも、別に構わない。
最初のコメントを投稿しよう!