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「こうしちゃいられない、役員会議だ。失礼する」
大平が立ち上がるので尾藤も腰を上げたが、手振りで押し留められる。
「そのままで。じきに茉莉が来るよ」
「え、ちょっと」
尾藤は息を呑んだ。このジジイ、何を言ってるのか。
大平がさっさと居間を出て行く。
まずい。尾藤は珍しくあからさまに狼狽しながら、急いで逃げようとした。ドアノブに手をかけようとした途端、勢い良くドアが開く。ぶつかるすんでの所で身をかわした。
「あっ、ごめんなさいっ」
その声を聞いただけで、心臓が跳ねた。
ドアを開けた茉莉は大きな目で瞬きもせずに、尾藤をしっかりと見つめていた。
(茉莉……)
26歳になった茉莉は、変わらず可愛らしかった。むしろ、成熟してより美しくつややかになっていた。
髪はあの頃より少し伸びている。あの頃着なかったようなきれいなワンピースを着ている。
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