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「友達のお見舞いです。初めての赤ちゃんを産んだんだけど、出血が酷くて、彼女の方が赤ちゃんより入院が伸びちゃって。でもようやく退院の目処がついたんです」
嬉しそうな口ぶりだ。かなり大事な友人らしい。
「それは大変でしたね。花束でよろしいですか? お見舞いでしたら、花瓶のいらない花籠のアレンジメントも人気ですよ」
「あ、そうか。そうします」
「もう作ってあるのもありますし、新しく作ることもできますよ。ご希望はございますか」
茉莉の言葉に、女性は顎に手をやった。ぎっしりと壁や通路を埋め尽くす、色とりどりの花のバケツを眺める。その中でも一際目立つ、大きな白いユリに目を留めると、ぱっと顔を輝かせた。
「これいいですね。彼女、白が好きなんです」
「カサブランカですね」
茉莉は少し考え、言葉を選びつつ言った。
「あのですね、ユリは一般的にお見舞いにはあまり選ばれないんです。匂いがかなり強いですし。これは気にしない方もいますが、白は縁起が良くないと」
白はお悔やみの色だからだ。
「え、知らなかった」
女性が顔を曇らせる。
「そっか……白、駄目なんだ」
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