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「私なら、大事な友人が、自分の好きな色と意味で花を選んでくれたら、とっても嬉しいです。かすみ草だけでも素敵ですし、バラやカーネーションを混ぜても華やかになりますよ」
茉莉の提案に、女性は顔をほころばせた。何度も頷く。
「いいですね、ピンクのバラがいいな」
「かしこまりました」
茉莉は笑顔で頭を下げ、かすみ草をバケツから抜いた。
こういう時、改めて思う。
お客の喜ぶ顔を見ること、受け取った花で元気を貰う人を想像すること。花屋冥利に尽きる。私はやっぱりこの仕事が好き。
茉莉は、アンに就職して二年目になる。一人前のフローリストを目指して、日々修行中だ。
花屋の仕事は楽しいけれど、世間のイメージほど美しくもないし、ユルフワでもない。花の浸かった水は冷たいし重いし、めちゃくちゃ重労働だ。お給料も休みも多くない。一日の仕事が終わる頃には、疲れ果てている。
それでもこの仕事が好きなのだ。好きなんだから、仕方が無い。
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