2.秋深し、隣は何をする人ぞ

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2.秋深し、隣は何をする人ぞ

「九時閉店さ、勘弁して欲しいよねー」 「同意です」  茉莉(まつり)と奈津子は、愚痴りながらやっとこさ閉店作業を終え、鍵を掛けて店を出た。  アンは今まで八時閉店だったのに、先月から九時に延ばした。繁華街が近く、夜のお客様もそれなりに見込めるからなのだが、主婦のパートさんは遅番に入れない人が多い。おのずと、社員である茉莉や奈津子の負担が増える。  茉莉達は繁華街を通って駅に向かった。  人出が多いと思ったら金曜の夜だ。  けばけばしい電光掲示板が極彩色を垂れ流し、酔払い達が歌を歌いながら肩を組んで歩いている。  桜丘市は一応ギリギリ首都圏の地方都市だが、正直、治安があまり良くないことで有名だ。夜はあまり女一人でウロウロしたくない。 「ねー、お姉さん達、二人共めっちゃくちゃ可愛いじゃん」  茶髪ポニーテールの男が、茉莉達に声を掛けてきた。少年といっていい程あどけない顔だ。  ナンパかな、と思ったら、 「稼げるお仕事探してなーい?」 と顔を覗き込んでくる。水商売のスカウトだ。県の迷惑防止条例で、スカウトやキャッチが禁止されて久しいのに、ここら辺では未だ生き残っている。 「探してないよ」  奈津子が冷たく言って、茉莉達は速歩きで駅に向かったが、少年はついてくる。
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