2.秋深し、隣は何をする人ぞ

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「ねー、体験だけでもいいからさー、ボクノルマ困っててさあ」 「あんたのノルマなんか知らないわよ」  奈津子が答えたその時、いきなり少年が吹っ飛んだ。アスファルトに転がる。 「えっ」  茉莉が息を呑むと、ジャージ姿の大柄な男が二人、少年を蹴っ飛ばしていた。 「お前、次は無いっつったろ!」 「えっ、何なの、怖い! 行こ、茉莉」  奈津子が茉莉の手を引っ張る。茉莉も駆け出そうとしたけが、振り返ると、少年は頭を抱え、無抵抗で男二人にガンガン蹴られている。 「あの子、死んじゃう」  背筋が冷えて、思わず茉莉は叫んだ。 「警察呼びますよ!」 「はあ? 何オマエ」  少年を蹴っていた男が振り向いた。坊主頭に、ごつい鎖のネックレス。どう見てもヤクザか半グレだ。怖い。めちゃくちゃ怖い。 「バカ、茉莉!」  奈津子が叫んだが、茉莉は自分の鞄に手を突っ込んだ。スマホを取り出そうとするが、手が震えて上手く探せない。そうしているうちに坊主頭がどんどん近付いてくる。  ああ、駄目だ、どうしよう。  涙が出そうになった時、遠巻きに見ている人達を押し退けて、一人の男が現れた。
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