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気がつくと目の前に静香が立っていた。
「ねぇ、あんた、成仏したんじゃなかったの?」
「そうだよ。僕の未練は君を殺していなかったこと」
「何のために? あなたが死んだ後に私を殺して何のメリットがあるの?」
「たしかに、僕たちはお互いを受取人にして、お互いに生命保険をかけた。
保険料の支払いが大変だからと両方とも契約者は僕にしたよね。
君には悪いが僕が死んだ時の受取人も、静香が死んだ時の受取人も、うちの母親にすぐに変更したんだ。契約者の特権だ」
「そ、そんな、じゃあ私の苦労は何だったの? あなた、初めての殺人でしょ。あなたに殺人なんてできないと思ってた」
「毎月、保険の掛け金が引き落とされる僕の通帳を見せるたびに、君はうす気味悪い笑みを浮かべた。
そんなきみを見て、僕の罪悪感は消えていった」
僕への警告の声を思い出す。
「菅原くん、あなた、静香と付き合ってるの?」
交際が始まったとき、人目を忍んで、僕に声をかけてきたのは、静香と中学校から学校が同じだったという瑠奈だった。
静香からは、「瑠奈とは話をしないほうがいいよ。あの子、昔から嘘つきだから」とあらかじめ、釘を刺されていた。だから、話をしたことはなかった。
「静香には気をつけたほうがいいよ。彼女の周りで人が死んでる。一人じゃない。あなたはたぶんもうターゲットになった。もう逃げられないけど」
瑠奈は、あの時、そう言うと呆然とする僕を残してすぐに去った。
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