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ガラガラ
さっきまでワイワイガヤガヤ、みんな話をしていたが、1限目の先生が教室に入ってくると、途端に静かになる。それでも、まだ、数人の話し声は聞こえていた。
「えー、今日は初めに皆さんに辛いお知らせがあります」
教授の神妙な表情と、そう言った後、口がピクピク動いているのに話し始めない異様さで、部屋は静まり返り、みんな教授を見つめていた。
「昨日の夜、よそ見運転の車が歩道に突っ込みました。このクラスの菅原義樹くんがちょうどそこを歩いていて、後ろから跳ね飛ばされたそうです。即死でした」
「えっ」
僕と静香は、同時にそう言って、目と目があった。そのあと、何か先生の話があって、授業に入ったようだが、僕と静香は見つめあったままで、しばらく時間が過ぎた。
静香の手が僕の手へと伸び、手を握りしめようとしたが空を切った。静香は、僕の体へと手を伸ばすがそのまま通過した。
静香が、両手を自分の口の前に持っていき、震えている。潤んだ瞳から涙が流れるのを黙って見ていた。
僕が彼女の手を握ると、しっかり握り返してきた。僕からは触れるのはなぜだろう。
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