初めての恋人

5/13

57人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
ガラガラ  さっきまでワイワイガヤガヤ、みんな話をしていたが、1限目の先生が教室に入ってくると、途端に静かになる。それでも、まだ、数人の話し声は聞こえていた。 「えー、今日は初めに皆さんに(つら)いお知らせがあります」  教授の神妙な表情と、そう言った後、口がピクピク動いているのに話し始めない異様さで、部屋は静まり返り、みんな教授を見つめていた。 「昨日の夜、よそ見運転の車が歩道に突っ込みました。このクラスの菅原義樹くんがちょうどそこを歩いていて、後ろから跳ね飛ばされたそうです。即死でした」 「えっ」  僕と静香は、同時にそう言って、目と目があった。そのあと、何か先生の話があって、授業に入ったようだが、僕と静香は見つめあったままで、しばらく時間が過ぎた。  静香の手が僕の手へと伸び、手を握りしめようとしたが(くう)を切った。静香は、僕の体へと手を伸ばすがそのまま通過した。  静香が、両手を自分の口の前に持っていき、震えている。潤んだ瞳から涙が流れるのを黙って見ていた。  僕が彼女の手を握ると、しっかり握り返してきた。僕からは触れるのはなぜだろう。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加