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「僕、死んじゃったみたいだね。コンビニの袋を持ったまま死んで、幽霊になって静香の家に行ったから、荷物、持ってなかったんだ。
僕の姿は君にしか見えないみたい」
「ちょっと、気持ちの整理ができない」
そう言う静香は1限目の授業の間、ずっと僕の手を握り締めて、うつむいていた。
「もう帰ろ」
1限目の授業が終わると静香がそう言った。
静香は席を立ち僕を見る。僕はバックパックを背負い、歩き出した静香の後ろを歩き始める。
「きゃー!」
振り向くと近くに座っていた早希と瑠奈が僕を指差して震えている。
「カバンが、カバンが、宙に浮いている!」
僕はすぐにバックパックを下ろす。クラス全員がキョロキョロして、僕を注目するときには、すでにバックパックを下ろしていた。
やはり僕の姿は、静香にしか見えないようだ。だから、カバンが宙に浮いているように見えたのだろう。
静香がさっと手を出すと、僕は机の陰でバックパックを渡した。
静香は、何もなかったように教室を出て、僕は慌ててその後を歩いた。
「不思議ね、義樹。カバンは見えるのに、あなたが着ている服は見えないのね」
たしかにそうだ。なぜ? と考えたときに、すぐに答えは思いついた。
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