記憶をなくした騎士

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 セブンは懸命に思い出そうとする素振りをした。咄嗟であった。見かねたロンドはこう教えてやった。 「たった三つだ。騎士が遵守(じゅんしゅ)すべき戒律、そのひとつに“騎士たるもの、万人を欺くな”とある。下手な嘘はつかない方が身のためだぞ」 「ええ。肝に銘じます」  ロンドの教えをセブンは真摯に受け止めた。硬い面持ちを崩さず、ロンドにこう頼んだ。 「副団長。俺、知りたいんです。もっと自分のこと」 「急かしはせんよ」  そう言ってロンドはセブンの肩に手を置いた。それからすれ違いざまに 「すぐ騎士団長に会いに行け。この建物の裏手にある神殿だ」  と告げて立ち去った。  セブンは、ただちに神殿へ向かった。神殿入口には見張りが何人も立っていて絶えず目を光らせていた。セブンは堂々と胸を張って「騎士団長はいるか?」と見張りに声をかけた。見張りは、やたらかしこまって道を開けた。セブンは少しだけほっとして、それから神殿に入って行った。入ってすぐの広間には竜を祀った祭壇があって、その手前では一人の少年があぐらをかいて瞑想をしていた。
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