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先輩が自責の念に駆られてそう言葉を吐き出したとき、こたつの上に置いてあった藤堂さんのスマホが突然、激しく振動した。
その音に僕は驚いて、一瞬だけ息が止まった。
液晶が光っている。誰かからの着信だ。
「出ないんですか?」
藤堂さんはその表示を見ながら、苦悶の表情を浮かべていた。なぜか、電話には出ない。
疑問に思いながら、僕は恐る恐る視線をスマホへ移した。
『祐季』
「……もう、やめてくれよ……とっくの昔に消しただろ……」
振動する音が部屋に響き、それが続いていく程恐怖が増していく。
やがて着信は切れた。
僕も藤堂さんも顔は青ざめて怯えている。
体験したことのない恐怖感に押しつぶされそうだ。なんでこんなことに……。
そのとき、僕はテーブルの上にある異様な光景に目が止まってしまった。
お菓子の袋や酎ハイの空き缶、それにマグカップ。
「な、んで、マグカップが、三つあるの?」
僕と藤堂さんのカップの他に、白いマグカップが一つ。雪だるまの絵がプリントされたそのカップの淵には、赤い口紅が付着している。
あまりの恐ろしさに、僕はこたつから離れた。背後には壁があって逃げ場はないが、それでもそのマグカップからは距離を取りたかった。
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