降り積もるな、雪

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「ふふふ」  女の人の笑い声が部屋に響いた。  背筋に寒気が走り、全身の血液が凍ったように思えた。暖房が効いているはずの部屋が途端に寒く感じた。もうやめてくれ、頼む……。  僕が観念したようにそう願ったとき、唐突に部屋の明かりが消された。 「うわああああ、て、停電?」 「は? は? は? 何だよ、何なんだよ、なんで停電なんか、おい大丈夫か?」  動悸が激しくなり、短くて荒い息が続く。怖い、もう嫌だ。奥歯がガタガタと鳴り、震えが止まらない。 「た、ただの停電だよな? 羽田、大丈夫か?」  藤堂さんの心配する声が辛うじて聞こえ、僕は少しだけ冷静さを取り戻した。大丈夫、電気が消えただけだ。落ち着け、そう自分に言い聞かせる。 「……ブ、ブレーカー、上げてきます」  僕は震えながら両手を伸ばして自分のスマホを探した。確か、机の上に置いてあったはず。  何も見えない中、手探りを続けるしかない。  指がテーブルの淵に当たり、大体の位置を把握する。長方形の固い物に触れ、それがスマホだとわかる。 「羽田、スマホあるか? 俺も探してるんだけど」 「あ、ありました。すぐに明かりつけます」  スマホを掴んだことで、ようやく恐怖から解放されるという安堵感が広がっていく。頭の中のイメージ通り、親指で液晶を押そうとしたその瞬間。僕の右腕を何かが掴んだ。  それは凍るように冷たくて、恐ろしいものだった。  全身が強張り、口が開いたまま塞がらない。声はおろか、息すらもできない。  冷たい手は僕の腕を登っていく。二の腕、肩、首。
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