ボーダーラインから

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 背後の壁沿いにクラスの人数分、それぞれ使用場所を決められた正方形型ロッカーが二段ずつならんでいる。でも、みんな面倒がって利用している人はほとんどいない。鞄はもちろん運動服など大きめの荷物のバッグも、机の横に掛けたりイスの下に置いてすましている。校則で基本的には、財布等の貴重品は学校に不要と定められているので、スマホなどの携帯端末を持参することはいちおう許可されているものの、体育の授業中などに紛失しても自己責任ということらしかった。  壁際には個人用ロッカーのほかに、掃除用具を入れた大きな縦長の簡易ロッカーがあった。なにげにそちらへ眼をやる。  後ろのドアから入ってすぐ左手横にそれはある。入室するとき、いつも実依はきまって急ぎ足ぎみにさっと通りすぎる。できれば見ないように見ないように、眼をそむけるように顔をまっすぐ前へ向けて。  でも今日はなんだか妙に気になる。理由は実依自身うすうす察していた。  一周忌。今日はおじいちゃんが亡くなってから、ちょうど一年になる。正直、実依にはあまりはっきりした記憶はなかったのだけれど、数日前に母親からいわれて気づいた。というより、忘れていたことを思い出したといった感覚のほうが近い。  でも関係ある? それと何のつながりが?
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