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 47都道府県を50音順にしたとき、ちょうどま。  ま、の音が聞こえた瞬間に私は早押しボタンを押した。 「島根県!」 「正解! ということで今月の優勝は秋吉(あきよし)冴良(さえら)!」  進行役のクイズ部部長から勝ち名乗りをいただいたので、イスから立って軽く会釈をした。10月に入って湿気が減ったのか、もらった拍手も乾いていた。また勝った。この程度のクイズなら当然だ。最後の問題も、予習と対策があれば迷うことはない。  日本の都道府県を何らかの順番に並べ替えるクイズはたまに出題される。今回は50音順だった。そこに「ちょうど」と来たら、10位や20位などキリのよい順位か、真ん中を問うのが定石だ。「ちょうどま」の段階で、真ん中に確定する。それが島根県。 「じゃあ来月は、秋吉さんが出題、お願いね」 「OKです。めっちゃ難しいの考えてきます」  一年生からも先輩からも青い吐息が漏れた。8畳ほどの部室が一気に狭くなる。クイズ部なのだから、難しい問題こそ嬉しくないのかなと思うのだけど。  我が城ヶ峰(じょうがみね)高校は、クイズ部の強豪校というわけではない。地区大会の一回戦を突破しただけで大騒ぎするようなレベルだ。だから10名いる部員の誰もが本気でクイズに挑んでいないのだと思う。家でクイズ番組を観る感覚で解答したり、時には出題しているのだ。でも私は違う。やるからには正解したい。クイズには必ず正解があるもの。  部員は持ち回りでクイズを作成する。次は私が出題担当だから、いつものように図書室の本でクイズを考えようと思ったが、やめておくことにした。今回はお父さんの本棚を渉猟しよう。最近、お父さんの本棚漁りが楽しい。書籍に限らず映画のDVDや音楽CD、マンガやゲームもある。様々なジャンルが混在しているからこそ、意図せずクイズ問題を見つけることができるというものだ。
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