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 駅の北口、自宅とは反対側にある大型スーパーは、半分はホームセンターのような店舗で、月末のハロウィンに向けたコスチュームや飾りつけなどの商品があちこちに陳列されていた。  ハロウィンのカボチャは「ジャック・オ・ランタン」という名前だし、もともとはカボチャでなくカブだったし、ハロウィンに関するクイズはあらかた作成していることを確認しながらお米のパン粉を購入した。 「今日は、リクエストの多かったヘルシーコロッケを作りたいと思います」  お母さんの生配信は予定通りに2時からスタートした。夕飯の献立に役立つよう、観る人たちが買い物に行く時間を逆算して設定したらしい。私は頼まれたパン粉を届けたので、自分の部屋に入ってクイズのネタ探しをしながら、スマホで配信を垂れ流している。配信中のお母さんの様子をリビングから眺めていたこともあったが、作業を手伝わされることが増えて避けるようになった。  キッチンから漏れ聞こえる立体的な声と、スマホを通して聞こえる平面的な声。微妙にラグのある二つのお母さんの声を聞きながら、配信後のことを考えて気持ちが高ぶるのを感じる。下手に遠回りをせず、ストレートにメモの紙を見せようと決めていた。 「ジャガイモを少し減らして、高野豆腐を使います。ヘルシーですよね」  お母さんは再婚したいと思わないのかな。料理ができるし、老け込むにはまだ早い年齢だし、何か具体的に考えているのかふと気になった。結局、メモのことやお母さんの将来を考えてばかりで、ろくにクイズはできなかった。
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