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「おつかれさま」  配信後のキッチンに声をかけると、お母さんは上機嫌で後片付けしているところだった。「千人、千人、越えたわよ」と視聴者数が歴代最高だったことをリズミカルに歌っている。 「早速だけど、ワガママ聞いてもらっていい?」 「ああそうね。パン粉ありがとう。何が欲しいの?」  その時、ポケットのスマホが震えた。祥太からのメールだった。プレビューは非表示なので内容まではわからない。後で確認することにする。 「この紙、見て?」  お父さんの本棚で見つけたメモの紙を、うやうやしくお母さんに渡した。祥太と冴良の文字だけが書かれている紙。受け取ったお母さんが不思議そうな声をあげた。そしてまたスマホが振動した。今度は電話だ。祥太から。 「ごめん、取り込み中なの」 「知ってる。配信切れてないぞ。母ちゃんの」 「えっ!? お母さん! 配信切れてないって!」  私が叫ぶと、もっと大きな悲鳴を上げてお母さんはスマホを操作した。「今度こそ大丈夫」と指差し確認したのを見たところで、電話の向こうから笑い声が聞こえた。 「てか、見てたの?」 「この時間、コンビニはヒマなんだよ。それより今日、何か様子ヘンじゃない?」  祥太は会話を続けようとした。お母さんの配信のことではなく、私のことだろう。幼なじみだけあって、何か察しているのかもしれない。  そうかな、と濁った茶を飲ませつつ強引に電話を切った。落ち着いたら連絡するから、と最後に言ってしまったことをすぐに後悔した。
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