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 早々に帰ろうと校門を抜けたあたりで声をかけられた。 「あれ冴良? 早いじゃん」 「あれ? 遅いじゃん」  幼なじみの宮沢(みやざわ)祥太(しょうた)だった。彼とはクラスこそ違うが、幼稚園から高校まで同じところに通ってきた。 「クイズ、どうだったん?」  親指を立てながら「また優勝」と言う私に、祥太は「さすが」と肩を叩いてきた。優勝すると翌月は強制的に出題側へ回されるが、それでも十回近くは優勝している。 「優勝のご褒美で早く帰れたわけ?」 「図書室でクイズを考えようと思ったんだけど、ほかの部員も同じことしてるって気づいてさ」 「カブっちゃうのがイヤだと」 「イヤっていうか、他の人と似たようなクイズだったら、つまらないじゃん」  祥太は「は」と「へ」の中間のような声を出しながら、感心したようにこちらへ指をさしてよこす。だから私も力強く指を伸ばし、祥太へ向けた。「そっちはいつもより遅いけど、大丈夫なの?」 「やべ」  カバンを抱え直し、祥太は走り去っていった。平日の放課後はコンビニのバイトがあると聞いている。不格好に全力疾走する後ろ姿を見送りながら、「やばい」の語源は何だったかなと頭の中を検索してみたりした。
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