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 ひと晩寝れば頭の整理もつくかと思ったが、次の日になってもお父さんのメモに抱く不気味さは変わらなかった。お父さんは何のために、私と祥太の名前をメモしていたのだろう。  答えがわからない場合、クイズだったら正解発表がある。でも今回のケースは出題者がいなくなってしまった。正解が判然としなかったり、いくつも説があったりするクイズは「諸説あり」という注釈つきでボツになるものだが、このメモもボツになってしまいそうだ。 「朝から難しい顔だな」  駅のホームで電車を待つ列に並んでいると、不意に声をかけられた。 「またクイズのこと考えてたんだろ」  祥太だ。彼の顔を見た瞬間、風邪のひき始めのように後頭部のあたりが気だるくなった。おはよう、と言いながらも、警戒警報のような非日常の響きが全身をめぐる。目の前のこの人物と私が、何らかの理由でメモに名前が並べられていることを改めて思い出す。幼なじみということとはまた別の、わざわざメモしておく必要がある関係性。  ちょうど電車がやってきた。逃げるように乗り込むと、あえて混んでいるほうへと乗客をかきわけて潜っていった。祥太と会話することが、この上なく憚られることのように直感したから。
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