さよなら初恋

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さよなら初恋

「ねぇ、ハル」 「なに?」 「ほんとに言いにくいんだけど…… そろそろ ここを出て行くことを考えてくれないかな?」  半年前から居候をさせてもらっている幼馴染から切り出された佐藤 春太(はるた)は『いよいよ来たか』と、息をのむ。 「お前が あの子と付き合い始めてから覚悟はしてたよ」 「ごめんな」 「こっちこそ。甘えっぱなしで悪かった」 「次のアパートが見つかるまで居てもらって構わないから」 「いや、近いうちに出てく。実は、物件をチェックしてたんだ。目ぇつけてるところがあるから近いうちに連絡してみる」そう話した春太であったが、実はでまかせ。何件か見繕っていたが家賃や初期費用の折り合いがつかず難航していた。 「おれ的には、ずっといてくれてもいいんだけどさ」 「それじゃ彼女に悪い。せっかく上手くいっているのに」 「3か月以上続いたの、アイツが初めてなんだわ」 「もしかして、結婚とか考えてる?」 「まさか。おれ、まだ21だし」 「同棲するの?」 「むこうの親が厳しくて。『ゆっくりできる場所が欲しい』って言われちゃって」 「確かに。毎回ラブホじゃ寛げないし金かかるしな」 「ごめん……」そう言って俯く大成(たいせい)に「謝るのはこっちだから」と、春太は頭を下げた。自分の性癖が親の知れ、高校卒業と同時に家を出た自分を小中学校の同級生だった彼が何かと世話を焼いてくれていた。 「ハルって引っ越し費用とかある?」 「ギリギリ、何とか」 「少しなら出せるよ」 「イヤイヤ!そこまでしてもらえない」 「お前の母ちゃん、融通してくれないかな」 「父親に仕送りがバレたから 無理。でも、お前の施設で働き出してから貯金が増えたから大丈夫」 「こっちもさ、ハルが来てくれて助かってるんだ。仕事覚えんの早いし要領いいし。元々賢かったもんな」 「雑だけど」 「家を出て3年経つんだよな。親父さんとは連絡取ってないの?」 「まったく。たとえ許してもらっても帰るつもりはない」 「ああ、確かに。おれだって、今さら実家に戻る気ないし親も期待していないし」 「そうなの?」 「だいたいあんな田舎、就職口がない。年寄りだらけで過疎化が進んでるし。みんな顔見知りだから噂話ばっか飛び交って。この前帰省したら、バス停のばあさん達が『誰々さんの娘が出戻った』とか『あそこの息子がどこそこに就職した』って話してて『ヤベぇ』と思ったし、コンビニで知らない婆さんから「介護の仕事って大変でしょ?」って話しかけられた時には『こえ~っ!』てなったよ」
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