1.はじまり

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セシナ晶湖は平坦な場所が多いが、所々マテリアルがデコボコと飛び出している場所がある。針のように大きく飛び出しているものもあれば、ちょっとした段差のようなものまで。 ある程度大きなものは樹晶と呼び、それを削って適度な大きさにしたものを、杖や指輪、小物に用いて、魔法を使うための魔法具にしているのだ。 普通この世界の人間や動植物は大なり小なり魔力を持っており、人は意識することで自分の体内にある魔力を感じ取ることが出来る。 だが、そのままでは魔法は使えない。そこでマテリアルを使うことで、魔力を形にしたり、魔法として扱う事ができるようになる...つまり、マテリアルはこの世界の必需品なのだ。 しかしセシナ晶湖の樹晶を放っておくと、家よりも大きく巨大な樹晶が大量に出来るだけでなく、樹晶同士がくっついて晶壁になって、作業が非常に難しくなる。この晶湖というのは、里山と同じく、人の手入れが必要なのだ。 そういう訳で、セシナ晶湖の近くにある森には、家が一軒建っている。 「さて、そろそろ仕事をしないとね」 白髪の青年は伸びをし、家を出る。いつものようにセシナ晶湖に向かい、めぼしい樹晶を見つける。 樹晶に手を当て、魔力を手元に集中させる。手元が淡く光ったかと思うと、ヒュルンと紫色の魔法陣が樹晶の真下に大きくに現れる 「...転送」 彼がそう口にすると、大きかった樹晶は、シュッと跡形もなく消えてしまった。大地も平坦である。 樹晶は今頃彼の家の前に送られているだろう。これが彼の普段の仕事の流れである。
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