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「……でも待って。……クロって、オス……だよ、な?」 「ん……?」 甘い甘い雰囲気に流されそうになりながらも、まだ微かに働く理性で問いかける。 いまだにクロに行真が押し倒されているような態勢だが、互いに重なっている下腹の部分に、クロの熱をしっかりと感じ取っていた。 遠い昔に実家で飼っていた程度で、猫の生態にそこまで詳しくはないが、多分オスとオスでそういうことにはならないはずだ。 というか、クロがオスならば必然的に自分がメスになるということか……? ただでさえ諸々が初めてな上に、相手は人間の姿をしているとはいえ、中身は猫でしかも自分と同じオス。 こんなハードルの高い初体験があるだろうか。……いや、ない。 「うん、でも僕……」 僅かに不安を覚え始める行真を、クロは恥ずかしげに見つめる。 もじもじと躊躇う様が反則級に可愛い……と思いつつも、どんな言葉が飛び出して来るのか。 覚悟して待つ行真に、クロはちらちらと上目遣いをしながら、口を開いた。 「……ゆくまに触れられたいなぁ、って……」 「え……」 「ゆくまが好きにして。僕はオスだけど、ゆくまに好きにしてほしい……」 「……っ」 「いっぱい、いっぱい可愛いって撫でて」 ゆくま、ともう一度自分の名前を呼ばれる。 同時に行真は態勢を変え、今度は行真がクロを押し倒す形になった。 「クロ」 名を呼び返せば、クロは嬉しそうに笑う。 今度こそ止めることなんて出来ない。 好きだとか、この気持ちが何だとか、クロへの想いだとか。 頭の中でぐるぐると回るそれらが溶けて流れて、麻薬のように全身を巡る。 「……っぅ、ん……っ」 食らいつくような、そんな激しいキスで唇を塞ぐ。 心の中の好きを、全てクロの中に注ぎこんでしまいたい。 ただひたすらに、そんなことを思っていた。
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